6月16日に奈良県黄斑疾患研究会に参加し、京都大学眼科学教授の辻川明孝先生による、「最新の検査機器から学ぶ網脈絡膜循環疾患の病態」という内容の後縁を拝聴しました。近年の検査機器の進歩のみならず、画像診断の解釈が深まってきたことで、今までは螢光眼底造影など負担の大きい検査を行わないと分からなかった病態が光干渉断層計(OCT)で捉えられることや、新たな疾患概念が明らかになってきたことを勉強しました。
血管閉塞性疾患(網膜中心動脈閉塞症や、網膜中心静脈閉塞症)では、OCTで血流に関しても評価ができることを知りました。網膜中心動脈閉塞症では血流が再開通しているかどうか、網膜中心静脈閉塞症では血流の悪い網膜の領域(無血管野)があるかどうかが、視力の予後に大きく関わり、治療方針にも影響してきます。OCTで血管の断層像を見ることで、血流のある血管では血管壁に挟まれた内腔に層流の印である上下に重なる丸が見えますが(下図)、血流のない血管ではこの所見が見られなくなり、一塊の丸として描出されます。以前は螢光眼底造影を行わなければ血流の評価ができませんでしたが(現在はOCT angiographyを用いても評価が可能です)、通常のOCTでも血流の有無が推定できることは、螢光眼底造影が一般の眼科クリニックでは行えないところが多く、患者様の負担も大きい検査のため、実臨床でとても役立ちます。

また、近年の画像所見の解釈が深まったことで、Paracentral Acute Middle Maculopathy(PAMM)という病態や、Acute Macular Neuroretinopathy(AMN)といった病態についても報告されるようになってきました。PAMMもAMNも中心部分の視力低下で発症しますが、眼底所見が乏しいことも多く、診断が難しいことが多い疾患群です。PAMMは網膜内層の虚血によって生じる病態であり、AMNは網膜外層から脈絡膜の虚血で生じる病態であることを、OCTの画像所見を基に教えていただきました。PAMMやAMNは比較的新しく提唱された疾患概念であり、恐らくそれほど稀なものではないと思われますが、大学病院や一般病院での診療を通してまだ2例ほどしか経験したことがありません。今回知識をアップデートしたことで、今後正確な診断ができるようにしていければと思います。